筋無力症の治療薬として、メスチノン、ステロイドや免疫抑制剤などを服用しています。
筋無力症という病気の特性を理解し、治療薬以外の薬には注意を払わなければなりません。普段何気ない日常の中で使われている薬の中には私たちにとって良くないものもあります。また、受けている治療内容によっては使わない方が良い薬もあるので気を付けなければなりません。
風邪や腹痛、ケガなどで一般開業医を受診される場合、必ず重症筋無力症であること、どんな薬を服用しているかなど医師に知らせてください。薬のリスト(処方箋)、お薬手帳などを持参するのもいいでしょう。しかしながら、気が付かず禁忌とされている薬や成分が入った薬が処方される場合があります。短期間での服用の場合は、ほとんど多くは自覚症状や悪化もなく過ごす事が多いですが、いつもと違う薬を服用して筋無力症の症状が悪化したり、何かおかしいと感じた時にはその薬を中止して主治医に相談してください。
また、歯を抜くときなどに使われる局所麻酔剤は、全身に影響がでるほど大量に使わない限り、局所麻酔剤の副作用で筋無力症を悪化させることはないと思われますが、薬には個人差があり、少量の麻酔薬でも悪化する場合もあります。筋無力症はストレスに大きく左右されるため、処置の際の痛みや不安などで症状が悪化する可能性はあります。
最近の傾向として、歯科(開業医)で歯を抜いたり歯茎を切開するなど大がかりな治療が必要となる時には、その治療を大きな病院に紹介して行われる事が多くなってきています。
筋無力症は病態から考えると、薬は簡単に言えば「筋肉を緊張させる」方向で使われます。筋肉が緩む(弛緩)すると脱力や筋力低下が起き、症状として現れるからです。従って、筋肉を緩める方向の筋弛緩薬は禁忌薬となります。
最近では、市販薬で気軽に購入できる「飲む肩こりの薬」「眠れる薬」「リラックスできる薬」などには、気を付けなくてはならない成分が入っていることが多いので注意が必要です。
注意が必要な治療内容と薬
抗菌剤(ニューキノロン系)
膀胱炎などの尿路感染症で処方されることが多く、薬の副作用でMGの症状悪化を来すことがあります。長引いた気管支炎などで、2種類目の抗菌剤として処方されることもあります。
抗菌剤(アミノグリコシド系)
点滴薬で用いる薬で、日常の外来で内服薬として処方されることはまず無いです。
抗生剤全ての注意抗生剤全ての注意
セフェム系の薬は全てMGから見ると安全なので、医師に言えるときには「抗生剤がでるのであればセフェム系の薬をお願いします」と伝えてください。
その他
ディートという虫除けに用いられている薬剤の成分が、メスチノン、マイテラーゼ、ウブレチドなどを内服している方にとっては禁忌になります。虫除けを選ぶ際には、肌に塗るタイプでは無く化学的な物を避けて、ミントなどの天然素材のものか蚊取り線香など直接肌につけるタイプではないものを使用してください。
グレープフルーツジュースがシップという肝臓にある酵素の一部を大量に消費してしまうことから、血中濃度が極端に高くなり併用禁忌とされています。本当に避けなければならないものは、製造過程で冷凍して水分を抜くような濃縮した、いわゆる100%濃縮還元グレープフルーツジュースが問題になります。
通常日本製のものであれば大きな影響は少ないと思います。アメリカ製の飲料を飲む場合には問題となるかもしれません。ジュースで薬を飲むようなことが無ければ問題ないと思っています。
摂取後30分経過すれば問題ないとする意見もあります。果実としてのグレープフルーツであれば一個以上食べることはまれと思われますので、同時接種で無ければ問題有りません。クラリスロマイシンなどの薬剤でもグレープフルーツジュースと同様の問題があり、むしろ併用薬の方が問題になります。
グレープフルーツジュースを併用しないようにと注意されている薬剤同士の同時摂取の方が問題になるかもしれませんが、現実的にはあまり注目されていません。処方を受けた後に、薬剤情報提供書などで以上のような疑念が持たれた場合は、速やかに薬剤師さんや処方を受けた医師への確認が必要と思います。
注意!
新型コロナウィルス感染症に対しての不安から、免疫抑制剤など自己判断で減薬したり、中止したことにより、症状の悪化を招き、入院加療となるケースも起きております。コロナ患者対応で、病院スタッフは疲弊しております。内服加療している不利益よりも、効果による利益の方がはるかに大きいです。くれぐれも自己判断による減薬、中止は行わず、主治医に判断を仰いでください。
監修 増田眞之先生
禁忌薬一覧表 ダウンロード →筋無力症禁忌薬一覧表20210118